
プラスチックカードの種類・特徴|用途別・素材別・加工別に網羅する完全ガイド
- 2025.09.09

【目次】
はじめに:プラスチックカードの需要と役割
プラスチックカードは、社員証や会員証、診察券、イベントパスなど私たちの生活やビジネスのあらゆる場面で使われています。本記事では、種類・素材・用途・加工方法・最新動向までを網羅し、目的に合ったカードを選ぶための完全ガイドをお届けします。
世界的に見ても、プラスチックカード市場は引き続き右肩上がりの成長が予測されています。Business Research Insightsの調査によれば、2024年に1,928億米ドル規模だった市場は、2025年に2,076億米ドルに達し、2033年には3,759億米ドルを超える見込みです。年平均成長率は7.7%とされており、中長期的な拡大が見込まれています。
この背景には、デジタルバンキングやeコマースの浸透による金融サービスのデジタル化、NFC搭載カードの普及による非接触型決済の拡大、そして企業によるロイヤルティ施策の多様化といった動きがあり、いずれもプラスチックカードの活用シーンを広げています。
出典:Business Research Insights
プラスチックカードの種類一覧
プラスチックカードにはさまざまな種類があり、代表的なものとしては以下のようなものがあります。
・PVCカード
・磁気カード
・PETカード
・オンデマンド印刷カード(デジカカード)
・ヘアラインカード
・クリアカード(透明カード)
・非接触型ICカード(FeliCa・MIFAREなど)
・PET-Gカード
・バーコードカード
・リライトカード
それぞれのカードには機能や特性に違いがあり、使用目的や管理方法に合わせて選ばれる傾向があります。たとえば、社員証にはICカード、会員証にはバーコードカード、金融関連ではセキュリティ性を重視して非接触型ICカードが多く採用されるなど、用途に応じて使い分けられています。
PVC・PET・PCカードの違いと選び方
使用される素材によってカードの性能や特性は大きく変わります。主な素材は以下の通りです。
・PVC(ポリ塩化ビニル):最も一般的で耐久性・加工性に優れ、コストも安価。加工に対応しやすい。
・PET(ポリエチレンテレフタレート):耐熱性が高く、軽量でリサイクル可能なためエコ素材としても注目。
・PET-G(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート):PETの改良型で、PETの強度と加工性を持ちながら、割れにくく透明性が高い。
・PC(ポリカーボネート):圧倒的な高強度で耐衝撃性を誇る高機能素材。公庁・医療分野などが発行するカードで長期使用向け。
PVCは低コストかつ加工の自由度が高い一方で、PET・PC素材は環境負荷軽減や長期使用を見据えた選択肢として多くの企業で導入が進んでいます。
比較表
項目 | PVC | PET | PET-G | PC(ポリカーボネート) |
加工性 | ◎ (非常に良い) | △ (やや制限あり) | 〇 (ほぼ良好) | △ (一部専用加工が必要) |
耐久性 | ◎ (非常に高い) | 〇 (一般的) | ◎ (非常に高い) | ◎◎ (最高レベル) |
環境配慮 | × (塩素含有) | 〇 (再生利用可) | ◎ (エコ・安全性高) | △ (再生材利用は限定的) |
コスト | 〇 (やや安価) | ◎ (安価) | △ (やや高め) | × (高コスト) |
用途の幅 | 広い | 中~広 | 中~広 | 限定 (高信頼性用途) |
セキュリティ適性 | 〇 | △ | 〇 | ◎ (IC・レーザー刻印に最適) |
用途別に見るプラスチックカードの活用事例
イベント・スタッフパス
展示会、セミナー、スポーツ大会、音楽フェスなど、短期開催のイベントでは、スタッフや関係者の識別用としてプラスチックカードが活躍します。名前や所属、役割を明記したパスカードは、入場管理やゾーンごとのアクセス制限をスムーズにし、運営の効率化に寄与します。
カードにはバーコードやQRコードを印字することで、来場管理システムと連携することも可能です。また、穴あけ加工を施すことでネックストラップにそのまま装着できる設計が好まれており、カバーなしでも視認性と携帯性を確保できるのがメリットです。印刷も小ロット・短納期に対応できるため、急なイベントにも柔軟に対応できます。
資格証・認定証
講座や研修を修了したことを証明する資格証・認定証としても、プラスチックカードの需要は高まっています。企業や団体が発行するこれらのカードには、氏名・認定番号・有効期限などを明記し、信頼性のある認証ツールとして活用されています。
カード本体には、ナンバリングやホログラム、サインパネルなどの加工を施すことで、偽造防止や権威性を高める工夫がされています。高耐久素材やラミネート加工によって、長期間の使用にも耐える設計が可能で、専門性や実績を証明する“携帯できる証明書”としての役割を果たしています。
社員証・学生証
社員証や学生証は、本人確認と組織所属の証明を兼ねたIDカードとして、多くの企業や教育機関で導入されています。カードには顔写真・氏名・所属・ID番号などの個人情報が記載され、受付業務や対面確認の効率化に役立ちます。
また、多くのケースで非接触型ICチップを搭載し、建物の入退室管理や勤怠記録、図書貸出などのシステムと連携しています。1枚のカードで複数の機能を兼ねる統合型IDカードとして運用されており、セキュリティ性と利便性の両面を支える存在です。
会員証・メンバーズカード
小売店や飲食店、美容サロン、フィットネスクラブなどでは、会員制度の運用にプラスチックカードが活用されています。ポイントの付与・利用、会員ランクの表示、特典の提供など、リピート施策やロイヤルティ向上のツールとして機能しています。
バーコードやQRコードを印字することでPOSシステムと連携でき、顧客の購買履歴や来店頻度をデータとして蓄積・活用することも可能です。印刷の自由度も高く、ブランドカラーやロゴを使ったデザイン性の高いカードは、店舗やサービスのイメージ向上にもつながります。
診察券
病院やクリニックで発行される診察券にも、プラスチックカードは広く利用されています。紙の診察券に比べて耐久性が高く、長期通院にも対応できる点が評価されています。
最近では、非接触型IC診察券が登場しており、受付端末にかざすだけで本人確認や予約情報の読み取りが可能になっています。医療機関の業務効率化と待ち時間の短縮を実現し、患者の利便性向上にもつながるツールとして定着しつつあります。加えて、再来院時の円滑な受付対応にも貢献しており、現場からの評価も高まっています。
プラスチックカードの印刷・加工方法による分類と選び方
主な印刷方式
・オフセット印刷:大量印刷向けで、色再現性が高く美麗。
・シルクスクリーン印刷:ベタ印刷やメタリック印刷に対応。
・デジタル印刷:オフセットに近い印刷品質で数百枚程度の小ロット印刷に最適。
参考:【プラスチックカード印刷ガイド】オフセット・シルクスクリーン・デジタル印刷の違いとは?プラスチックカードの印刷方法を徹底解説!
・昇華転写印刷:小ロット・可変印刷に適し、写真印刷にも強い。
・再転写印刷:カード端まで印刷可能で、社員証などに最適。
主な加工技術
・ナンバリング(連番)
印字加工、エンボス加工、デボス加工(プレス連番)
参考:プラスチックカードのナンバリング メリット・方法・注意点をわかりやすく解説
・バーコード、QRコード印刷
・エンボス加工(数字の浮き出し)
参考:エンボス加工って?印刷の仕様やプラスチックカード作成時のポイントを解説
・箔押し
・サインパネル(署名欄)
・シルクパネル
・磁気テープ
・スクラッチ
・艶消しマット
機能性・視認性・偽造防止の観点から、複数の加工を組み合わせるケースが主流です。
プラスチックカードの進化と拡張性
セキュリティ機能付きプラスチックカードの重要性
社員証・学生証・診察券・会員証など、プラスチックカードの多くは個人情報の保持や施設へのアクセス制御を目的として使用されており、不正利用やなりすましの防止など、万全なセキュリティ対策が不可欠です。
近年は、ICチップの搭載をはじめとした高度な認証機能の標準化が進んでおり、プラスチックカードは単なる情報媒体ではなく、本人確認やデータ保護を担うセキュリティツールとしての役割を強めています。現代のビジネスや公共機関においては、下記のような機能を備えたカードが広く採用されています。
・ICカード(接触型/非接触型)
・PINコード付きカード・ホログラム
・マイクロテキスト付きカード
・磁気カードとICのハイブリッドカード
特に金融機関や官公庁など、高度なセキュリティが必要な分野では、情報を暗号化し本人認証も可能な非接触型ICカードが主流です。これらのカードは、印刷面にも改ざん防止や視認性向上の工夫が施されています。多層的な防御が企業や組織の信頼を支える基盤となっているのです。
環境対応型のプラスチックカードの登場と今後の主流化
近年、SDGsの浸透や環境意識の高まりから、環境に配慮したプラスチックカードのニーズが高まっています。従来は耐久性やコストの面でPVC素材が主流でしたが、今では素材の選択自体が企業の姿勢を示す重要な要素となってきました。
特に「脱プラスチック」や「カーボンニュートラル」の取り組みが企業評価に影響を与える中、再生素材や生分解性素材の使用が進み、CSRやブランドイメージ向上にもつながっています。
代表的な環境配慮型素材としては以下があります。
・リサイクルPVCカード
・PET-Gカード
・再生PETカード
・バイオマスプラスチックカード
これらの素材は、カードの機能性や印刷のしやすさを保ちながら環境負荷を抑えられる選択肢です。環境に配慮した製品の採用は企業イメージの向上に直結し、持続可能なビジネス運営に寄与する具体的なアクションとなっています。
参考:【プラスチックカードの常識を覆す!】環境にやさしい次世代型サスティナブルカード「エコカード」のすべて
プラスチックカード選定時のチェックポイント
プラスチックカードを導入する際には、以下のポイントを明確にすることが重要です。
- 使用目的(認証・販促・管理など)
- 必要な機能(IC・磁気・バーコードなど)
- 印刷・加工の有無と種類
- 使用期間(短期/長期)と耐久性の要求レベル
- コスト・納期・発行頻度のバランス
- 既存システムとの互換性(カードリーダー・管理ソフト等)
プラスチックカードの今後の展望
プラスチックカードは今後、デジタル技術とさらに融合していくでしょう。スマートフォンと連携するICカードや、クラウドで管理するカード発行システム、オンライン決済に特化したバーチャルカードとの併用などが増え、利便性とセキュリティを両立した高度な仕様が主流になります。
また、顔認証や生体認証と連動した次世代カードの開発も進んでおり、カードの役割は単なる持ち歩くツールから、情報を一元管理するハブへと変わりつつあります。
こうした技術の進化により、プラスチックカードは多機能で高いセキュリティを持つ「次世代の情報基盤」へと成長しています。今後は、これらの動向を踏まえた導入や活用が、企業の競争力を左右する重要なポイントとなるでしょう。
まとめ:最適なプラスチックカード選びでビジネス価値を高める
プラスチックカードはその種類・素材・加工・セキュリティ・環境対応性など多岐にわたり、目的に応じた最適な設計と選定が求められます。単なる印刷物としてではなく、企業戦略の一端を担うツールとして導入することで、ブランド価値の向上・顧客満足度の向上・業務効率の改善といった多くのメリットを得ることができます。
本記事が、貴社にとって最適なプラスチックカードの導入と活用を進める際の参考になれば幸いです。プラスチックカードに関するご相談は、半世紀以上にわたり国内プラスチックカード業界をリードしてきたカーディナルにぜひお任せください。