名前・番号を後から印字するカードの入稿データ作成
- 2026.09.28
会員証、認定証、社員証。1枚ずつ氏名や番号が違うカードをつくるとき、デザインを自社で用意したうえでご相談いただくことも、カードマーケットでは珍しくありません。ところが入稿の段階になって、「この名前のところは、どう渡せばいいのだろう」と手が止まる。
理由はシンプルで、全枚数に共通する絵と、1枚ずつ変わる文字は、別々の工程でカードに乗るからです。この2つを1枚の絵として作り込んでしまうと、あとから動かせなくなります。
この記事では、個別の情報を印字することを前提にしたとき、デザインデータ側で何をしておくべきかを説明します。塗り足しやカラーモードといった入稿データ全般の作法ではなく、印字と隣り合う部分に絞って解説します。
【目次】
共通で刷る絵と、1枚ずつ変わる文字は、別々に作られる
1枚のカードは、二段階でできあがります。
まず、全枚数に共通する部分を刷ります。背景、ロゴ、団体名や制度名、罫線。ここは何枚つくっても同じ絵ですから、一度作ってしまえば同じものが刷り上がります。
刷り方は仕様と枚数で変わります。写真や繊細なフルカラーの絵柄はオフセット印刷、単色のロゴや文字はシルクスクリーン印刷、というように使い分けます。ブランドカラーを厳密に再現したい場合は、DIC・PANTONEなどの特色指定にも対応できます。小ロットの場合は、版を使わないデジタル印刷で作ることもあります。ただしデジタル印刷はカラーのみで、特色は使えません。
そのあと、氏名や番号のように1枚ずつ違う情報を、カード専用のラインサーマル熱転写プリンターで印字します。漢字も記号も入りますし、バーコードやQRコードも印字できます。顔写真もこの後工程で入りますが、こちらは昇華転写・再転写という別の加工になります。
つまり、個別の情報は「印刷されている」のではなく、刷り上がったカードの上に後から乗っているということです。ここを分けて考えられるかどうかで、渡すデータの作り方が変わります。
| カードに載せる要素 | どちらで入るか | 備考 |
| 背景・ロゴ・団体名・制度名・罫線 | 共通印刷(オフセット/シルクスクリーン/デジタル) | 全枚数が同じ絵。オフセットとシルクスクリーンは特色指定にも対応可能、小ロット向けのデジタル印刷はカラーのみ |
| 氏名・認定番号・発行日・有効期限 | 個別印字(バリアブル印字) | 色は黒のみ。漢字・記号も印字可能 |
| バーコード・QRコード | どちらでも可 | 内容が1枚ずつ変わるなら個別印字、全枚数共通なら共通印刷側 |
| 顔写真 | 個別加工(昇華転写・再転写) | 画像は350dpi以上を推奨(最低300dpi) |
どちらで入れるかはカードに載せる内容ごとに判断が変わります。作りかけのデザインをお送りいただければ、印字で入れられる範囲と、共通印刷側に置いたほうがよい要素をご案内します。
可変印字そのものの仕組みや名簿データの整え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
氏名や番号の場所は、アタリを入れて渡す
印字する場所を白いまま渡すだけでは、位置も文字の大きさも伝わりません。実際に入る内容の見本を、入れたい位置に置いておくのがいちばん確実です。
「印字する場所は空けておけばいい」と考えて、その部分を白いまま渡してくださるお客様がいます。気持ちはよく分かるのですが、これだと情報が足りません。空白からは、どこを起点に文字を並べるのか、どれくらいの大きさで入れるのか、右揃えなのか中央揃えなのかが読み取れないからです。
実際にうまくいくのは、デザインデータの中にアタリとしてダミーの文字を入れておいていただく渡し方です。「山田 太郎」「No.0001」「2026年4月1日」といった具合に、実際に入る内容の見本を、入れたい位置・入れたい大きさで置いておく。これがあると、その意図をそのまま再現する形で印字を組めます。
アタリを入れるときは、次の点を意識していただけると精度が上がります。
- 実際に入りうるいちばん長い氏名と、最大桁数の番号で幅を見る。短い名前を基準に作ると、長い名前の人のところで文字が詰まって見えます
- 文字の周囲には余白を持たせる。ぴったりの枠を切ると、わずかな位置のばらつきで窮屈に見えます
- 揃え方を決めておく。左揃えか中央揃えかが決まっていれば、書き添えてください
「氏名」「認定番号」といった項目名を共通印刷側に刷り込むかどうかも、この段階で決めておきたい点です。項目名を刷り込むと、印字はその横の決まった位置にしか入れられなくなります。運用の途中で入れる情報が変わる可能性があるなら、項目名も含めて印字側で入れる組み立てにしておくと、あとから融通が利きます。
なお、カードの入稿にはIllustrator形式のテンプレートを無料で配布しています。仕上がり線と、文字を置いて安全な範囲があらかじめ引いてありますので、アタリの位置決めにも使えます。
印字が乗る下地は、白場を基本に考える
印字は後から熱で転写されるため、その下に何があるかで読みやすさが変わります。
いちばん確実なのは、印字する範囲を白場——インクを乗せない、白いままの部分——にしておくことです。黒い文字が最もはっきり出ます。
とはいえ、カード全体のデザイン上どうしても地色を敷きたいこともあります。淡い色の上に印字した実績はありますので、その場合はご相談ください。逆に、濃い色や柄、写真が重なる場所は避けたほうが無難です。黒い文字が背景に沈んで、遠目に読めないカードになってしまいます。
認定証や社員証のように、相手に見せて確認してもらうためのカードでは、この読みやすさが実用性に直結します。デザインの見栄えを優先して氏名欄に柄をかけると、肝心の場面で用を成しません。
印字される文字は黒一色、書体もあらかじめ決まっている
個別印字には、デザイン側とは違う2つの制約があります。
ひとつは色です。バリアブル印字で入る文字の色は黒のみになります。有効期限だけを赤で目立たせる、区分ごとに文字の色を変える、といった表現は個別印字では作れません。
色で見分けさせたい場合は、共通印刷の側で処理することになります。区分の数だけカードのデザインを分ける、という考え方です。カードの色分けと文字表示それぞれの向き不向きは、こちらの記事で整理しています。
もうひとつは書体です。文字サイズや書体には選択肢がありますが、基本になるのは、Windowsに標準搭載されている書体です。デザインデータで使った特定のフォントを、そのまま個別印字に持ち込むことはできません。
実務としては、アタリで使われている書体を見て、印字できる中から近いものを選ぶ形で進めることが多くなります。ですからアタリを作る段階で、あまりに個性の強い書体を使わないほうが、仕上がりのイメージが揃いやすくなります。共通印刷側のロゴや制度名は、アウトライン化して入稿していただければどんな書体でも構いません。書体の制約がかかるのは、印字で入る文字だけです。
Canvaで作ったデータを渡すとき
社内にデザイナーを置いていない団体から、Canvaのようなツールで作られたカードのデザインデータをお預かりすることがあります。実際に、一般社団法人日本骨格バランス協会様の骨格メイク検定合格証カードは、Canvaで作られたデータをもとに製作しました。300枚のカードに、名前・日付・番号を後から印字してお届けしています。ですので、Canvaで作ったから印字ができない、ということはありません。
ただし、印字と組み合わせるときには気をつけたい点があります。
Canvaから書き出されたデータは、1枚の絵として扱われます。画面上ではテキストボックスや図形を重ねて作っていても、書き出した時点でそれらは分離できません。「氏名欄のつもりで白い四角を置いた」場合も、その下に背景の柄が敷かれていれば、柄ごと1枚の絵として刷られます。印字する範囲だけを後から抜くことはできないので、下地の処理は書き出す前に済ませておく必要があります。
前の章で触れたアタリも同じです。Canvaのフォントは種類が豊富ですが、その書体がそのまま印字されるわけではありません。あくまで位置と大きさを伝えるためのものと考えてください。
塗り足し、カラーモード、解像度、フォントの扱いといったCanva特有の入稿の作法は、別の記事にまとめてあります。この記事とあわせてご覧ください。
FAQ:よくある質問
- Q. デザインデータに入れたアタリの文字は、そのまま印刷されてしまいませんか?
- A. いいえ。アタリは位置と大きさを伝えるためのものですので、共通印刷のデータからは外して製作します。入稿の際に「この部分はアタリです」と一言添えていただければ確実です。念のため、確認用のPDFなどにも同じ注記を入れておくと行き違いを防げます。
- Q. 氏名の文字数が人によってかなり違います。どう指定すればよいですか?
- A. 想定される中でいちばん長い氏名を基準にアタリを作ってください。ここで幅を確保しておけば、全枚数を通して見た目が揃います。決めた範囲に収まらない氏名が出てきた場合も、プリンタ側で文字を横方向に縮めて枠内に収めることはできます。ただし縮めるほど文字同士が詰まって見えますので、極端に長い氏名が混ざる名簿では見栄えが落ちることもあります。その場合は、長い氏名の方だけ別の印字レイアウトを用意しておき、プリンタ側で切り替えるという対応も可能です。名簿をお預かりする段階で最長の文字数は確認しますので、気になるようでしたらその時点でご相談ください。
- Q. 印字する場所を、あとから変更できますか?
- A. 共通印刷を刷る前であれば変更できます。刷り上がったあとは、カードの絵柄が確定しているため、印字位置だけを大きく動かすことは難しくなります。とくに「氏名」「認定番号」といった項目名を共通印刷で刷り込んでいる場合は、印字がその横の位置に固定されるため、変更はかなり厳しくなります。ベースカードをお預かりして追加発行を続ける運用では、最初に決めた印字位置がそのまま続くことになりますので、初回の段階でご相談ください。
- Q. 名簿はどんな形式で渡せばよいですか?
- A. ExcelやCSVでお受けできます。カードに載せる項目を列に分けていただき、デザインデータのアタリとどの列が対応するかが分かるようにしてください。ひとつ気をつけていただきたいのが、バリアブル印字はお預かりしたデータに入力されているとおりに出力されるという点です。姓と名のあいだにスペースが入っていればそのぶん間隔が空きますし、入っていなければつながって印字されます。全角と半角の違いもそのまま反映されます。名簿の中で表記が揃っていないと、カードごとに見え方がばらついてしまいますので、スペースの有無と全角・半角はお渡しいただく前に統一しておいてください。
- Q. 印字の仕上がりを、量産前に確かめられますか?
- A. 試作の製作もご相談いただけます。印字位置や下地との関係は、画面で見るのと実際のカードで見るのとで印象が変わる部分ですので、枚数がまとまる案件では事前に現物でご確認いただくことをおすすめしています。
まとめ
1枚ずつ違う情報が入るカードでは、共通で刷る絵と後から印字される文字が別の工程で乗ります。この前提を持ってデザインを組むだけで、入稿後のやりとりはかなり短くなります。
印字する場所は、空白にするのではなくアタリを入れて渡してください。いちばん長い氏名と最大桁の番号で幅を見て、下地は白場を基本に考える。印字される文字は黒一色で、書体もWindowsの標準搭載フォントが基本になりますから、色や書体で個別情報を演出したい場合は共通印刷側に組み込むことになります。Canvaで作られたデータでも、この考え方は変わりません。
デザインが固まりきる前の、まだ動かせる段階でご相談いただけると、印字を前提にした調整をご提案できます。作りかけのデータでも構いません。
プラスチックカードの製作はカードマーケット(カーディナル株式会社)へご相談ください
氏名や番号が1枚ずつ違うカードの製作をご検討中の企業・団体の方は、ぜひカードマーケットへご相談ください。
カーディナル株式会社は、創業50年以上・国内自社工場を持つプラスチックカード製造の専門メーカーです。長年の経験と技術の積み重ねを背景に、取引社数7,000社以上の実績を持ち、会員証・診察券・社員証・イベントパスなど、あらゆる用途のカードに対応しています。「デザインは自分たちで作ったけれど、この形で入稿できるか分からない」といったご相談にも、専門スタッフが丁寧にご提案いたします。品質管理体制や製造工程については、【品質へのこだわり】のページで詳しくご紹介しています。
