印字加工とは?プラスチックカードでできること・素材・仕様・コストをわかりやすく解説
- 2025.11.18

会員証や資格証、認定証などのプラスチックカードを制作する際、欠かせない工程のひとつが「印字加工」です。印字加工を行うことで、名前・番号・バーコード・QRコードなど、一枚ごとに異なる情報を付与できるようになります。この記事では、印字加工の仕組みや印字できる内容、対応素材・仕様、さらに印字加工を効率的に活用する方法を詳しく解説します。
【目次】
印字加工とは?一枚ごとに異なる情報を付けられる後加工
印字加工の仕組み
印字加工とは、カード表面に個別情報(可変情報)を追加で印刷する工程です。あらかじめデザインを印刷したベースカードに、専用の印字プリンタを使って氏名・番号・日付・バーコード・QRコードなどを一枚ずつ印字します。
印字プリンタの多くは、熱転写方式(サーマルプリント)を採用しています。熱転写方式とは、インクリボンに付いた顔料を熱で溶かし、カード表面に転写する仕組みです。熱によってしっかりと定着するため、印字面は擦れに強く、長期間の使用にも耐えられます。
この方式には次のような特長があります。
- PVCやPETなどの滑らかな素材にも安定して印字できる
- 細かい文字やバーコードも鮮明に再現できる
- 可変データ(名前・番号など)を一枚ずつ処理可能
そのため、同じデザインのカードに一人ひとり異なる情報を加える用途に最適です。会員証、資格証、社員証など、個人情報を扱うカードの多くは熱転写方式で印字されています。
印刷との違い
- 印刷(オフセット・デジタル印刷など):全カードに同じデザインを印刷
- 印字加工:共通デザインのカードに後から個別情報を追加
つまり印字加工は、「共通デザイン × 個別情報」という組み合わせを効率的に実現するための仕組みです。
印字加工でできる主な内容

印字加工では、カードの用途に応じてさまざまな情報を追加できます。代表的な印字内容を順に見ていきましょう。
テキスト(漢字・アルファベット・ひらがな・カタカナ)
最も一般的なのが、名前や役職、所属、日付などの文字情報の印字です。印字プリンタは日本語(漢字・ひらがな・カタカナ)や英字、数字に対応しており、会員証・資格証・社員証など幅広い用途で利用されています。
フォントサイズは基本的に自由で、プリンタ内蔵フォントのほか、Windows標準フォント(MSゴシック、Arialなど)も使用できます。読みやすさやデザインとのバランスを見て選ぶのがポイントです。
ナンバリング(連番・管理番号など)
連番や識別番号を印字する「ナンバリング加工」もよく行われます。たとえば、会員番号や認定番号などをExcelやCSVデータから自動的に読み込み、一枚ずつ違う番号を印字します。番号管理が必要なカードや、限定性を持たせたいカードに適しています。
バーコード・QRコード
バーコードやQRコードを印字することで、カードをシステムと連携させることができます。QRコードにはURLや会員ID、認定情報などを埋め込むことができ、店舗やイベント会場での認証・チェックインにも活用されています。情報の読み取り精度が高く、耐久性にも優れているため、実務用途での利用が増えています。
印字加工の仕様:印字位置・色・素材・厚みなど
印字加工は、カードデザインや素材によって仕様が異なります。依頼時に確認しておきたい代表的な項目をまとめました。
印字できる範囲
印字は、カードの端から5mm内側の範囲であれば基本的にどこでも可能です。左上に氏名、右下にQRコードなど、デザインのバランスに合わせて自由に配置できます。ただし、箔押しや穴あけなどの他の後加工と重なる部分は避ける必要があります。
印字できる色
標準的な印字色は黒ですが、業者によっては金・銀・白にも対応している場合もありますので、確認をするとよいでしょう。黒地カードに白文字を印字したり、認定証などで金や銀を使用したりすることで、高級感のある仕上がりにすることも可能です。
印字可能な素材
印字加工は以下のようなカード素材に対応しています。
| 素材 | 特徴 |
|---|---|
| PVC(塩ビ)カード | 最も一般的な素材。発色・耐久性に優れる。 |
| PETカード | 薄くて軽量。環境対応を意識した用途にも。 |
| 再生PETカード | 使用済みPETを再利用した環境配慮型素材。 |
| リサイクルPVCカード | 端材や廃材、回収したPVCを再利用。SDGs対応の素材として注目。 |
| PET-Gカード | 焼却時に有害ガスの発生を抑制。PVCと同等の耐久性や加工性がある。 |
環境対応素材にも印字できるため、最近では「再生PET」や「リサイクルPVC」を選ぶ企業も増えています。
印字可能なカード厚
0.188mm(PETなどの薄型)〜0.76mm(標準的なプラスチックカード)まで対応。診察券やポイントカードなどの薄型から、クレジットカードやキャッシュカードと同等厚のタイプまで印字できます。
フォントサイズ・種類
- サイズ:自由に設定可能(デザインとのバランスに応じて調整)
- 種類:印字プリンタ内蔵フォント、Windows標準フォントに対応
明朝体など線の細い書体はサイズによっては欠けたように見える場合もあるため、可読性を重視する場合はゴシック体などを選ぶとよいでしょう。
印字とエンボスの違い
印字加工と混同されやすいのが「エンボス加工」です。どちらもカードに情報を付与しますが、仕上がりや用途は異なります。
| 比較項目 | 印字加工 | エンボス加工 |
|---|---|---|
| 仕上がり | 平面(フラット) | 文字が浮き出る立体加工 |
| 主な用途 | 会員証・資格証・社員証など | クレジットカードなど |
| 文字の種類 | 漢字・ひらがな・カタカナ・英数字に対応 | カタカナ・英数字(フォント制限あり) |
| デザインの自由度 | 高い(任意位置に印字可能) | 加工位置や文字サイズなど制約が多い |
| 文字色 | 黒(※ 金・銀・白) | 黒・金・銀 |
エンボス加工は立体的で高級感がありますが、印字加工は柔軟性・コスト・可変情報対応の面で優れています。用途に応じて使い分けるのがポイントです。
参考:エンボス加工とは?印刷の仕様やプラスチックカード作成時のポイントを解説
カーディナルの印字加工サービス:在庫管理でコストと納期を最適化
カーディナルでは、同じデザインのカードをまとめて作成し、在庫としてお預かりするサービスを提供しています。必要になったタイミングで、在庫してあるカードに印字加工を施して納品する仕組みです。
この方法には次のようなメリットがあります。
- ベースカードを大量に印刷して単価を抑えられる
- 印字のみ都度対応できるため、追加発行がスピーディー
- ベースカードが共通のため、色味・品質が安定
- 発注のたびにデザイン印刷から行うよりコストを削減可能
会員証や認定証のように、定期的に追加発行が発生するカード運用に最適です。初回にベースカードを作成しておけば、後の印字作業は必要な分だけ。コスト・納期・品質のバランスを最適化できます。
FAQ:よくある質問
プラスチックカードの印字加工について、実際にお問い合わせいただくことの多い内容をまとめました。初めてカードを発注する方や、会員証・認定証を企画する担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- Q. 印字加工とエンボス加工の違いは何ですか?
- A. 印字加工は、熱転写プリンタを使用してカード表面に文字や番号、バーコード、QRコードなどを「黒インク」で載せる後加工です。一方、エンボス加工はクレジットカードのように数字を「盛り上げる」加工で、フォントや位置に大きな制約があります。細かい情報や個別データを扱う用途には、自由度の高い印字加工が適しています。
- Q. 印字に使えるフォントは自由に選べますか?
- A. 基本的には、印字プリンタに搭載されているフォント、もしくはWindowsに標準で搭載されているフォントであれば使用できます。特殊書体やデザイン性の高いフォントをご希望の場合は、事前に相談をおすすめします。
- Q. 印字位置はどの程度まで自由に調整できますか?
- A. カード端から5mm以内を避ければ、ほぼ自由に配置できます。名前の位置を揃えたい、QRコードは右下に固定したいなど、細かな位置指定にも対応可能です。
- Q. 印字できる色は黒だけですか?
- A. カーディナルでは、安定した品質を保つため標準は「黒印字」です。業者によっては金・銀・白などに対応する場合もありますが、素材や使用条件によって仕上がりに差が出るため、安定性・視認性の高い黒印字が最もおすすめです。
- Q. 印字された文字は時間が経つと消えたり薄くなったりしますか?
- A. 熱転写印字は耐摩耗性に優れており、一般的な使用環境では剥離や退色の心配はほとんどありません。ただし、強い摩擦や鋭利なものでこすった場合には薄くなる可能性があります。
- Q. 外字(旧漢字)も印字することは可能ですか?
- A. はい、可能です。外字エディタ等で該当の漢字を画像として作成し、貼り付けることで対応いたします。ただし、作成費用など別途費用が発生する場合がございます。
- Q. ベースカードの在庫保管の期限はありますか?
- A. カーディナルでは、原則直近のご依頼日より2年間はお預かりさせていただいております。前回のご依頼より2年を経過しても発行のご依頼が無い場合は、お預かりさせていただいているカードはすべてご返却させていただきます。
- Q. カードサイズ(54mm×85.6mm)以外も印字できますか?
- A. サイズによっては対応可能ですので、ご相談ください。
まとめ:印字加工はカードの「最後のひと手間」で価値を高める
印字加工は、プラスチックカードに情報としての価値を付与する最終工程です。個別情報を印字することで、信頼性と機能性の両立が可能になります。さらに、カーディナルの「在庫印字サービス」を活用すれば、ベースカードの大量印刷によって単価を抑えつつ、必要なタイミングで印字を追加して納品する柔軟な運用が可能です。
カード制作を検討する際は、デザインや素材だけでなく、用途に応じた加工内容までを考慮して企画することで、より効率的で価値のあるカード制作を実現できます。
会員証や資格証の導入を検討されている方、運用方法にお悩みの方はカーディナルへお気軽にご相談ください。専任の担当者が最適な方法をご提案させていただきます。







