社員証とは?プラスチックカード作成の仕様と進め方
- 2026.08.18
「社員証を作ることになったものの、何から決めればいいのかわからない」——総務・人事のご担当者から、そうしたご相談をいただくことがあります。デザインは後からでも調整がききますが、券面に載せる項目や持たせる機能は、決めたあとで変えようとすると作り直しになります。この記事では、社員証をプラスチックカードで作るときに決めるべき仕様を、どこから手をつければよいかの順番も含めて、50年以上プラスチックカードを作り続けてきた製造現場の視点から整理します。
【目次】
社員証とは?入館証・従業員証との違い
社員証とは、企業や団体に所属する従業員であることを示すために発行されるカードです。「従業員証」「社員カード」「社員IDカード」とも呼ばれますが、呼び方が違うだけで用途はほぼ同じものを指します。券面に載せる情報は氏名・顔写真・社員番号・所属・会社名やロゴといったあたりが一般的で、所属の証明と本人確認が主な役割です。
なお、社員証の発行は法律で義務づけられているものではありません。発行していない会社も実際にあり、規模や業種、セキュリティ要件に応じて判断されているのが実情です。来訪者の出入りが増えてきた、入退室を区画ごとに管理する必要が出てきた——そうしたタイミングで整備に踏み切るケースをよくお見かけします。
混同されやすいのが入館証です。入館証は特定の施設や区画へのアクセス権を与えることに特化したカードで、社員だけでなく来訪者や協力会社にも一時的に発行されます。社員証は「誰であるか」を示し、入館証は「どこに入れるか」を示すもので、役割の軸が違います。ただし実務では、社員証に入館機能を持たせて1枚にまとめる運用も多く見られます。
社員証の仕様は「どの機能を持たせるか」でほぼ決まる
社員証の仕様は、次の順番で決めていくとまとまります。
| 決めること | 判断のよりどころ | |
| ① | 持たせる機能 | 既存の設備・システム、または社員証に兼ねさせたい業務 |
| ② | 券面に載せる項目 | 運用の手間(異動・再発行の頻度) |
| ③ | 素材と厚み | 携帯頻度と、①で選んだ機能 |
| ④ | 券面の作り込み | 意匠性と、発行の進め方 |
順番には意味があります。機能が決まらないと素材が決まらず、機能と券面項目が決まらないと発行の進め方も判断できません。デザインから入りたくなるところですが、レイアウトの調整は後工程でも間に合います。先に骨格を固めてしまうほうが、結果として早く進みます。
そして、この4つのうち仕様全体をもっとも大きく左右するのが①の機能です。ここが決まると、残りは自然と絞られていきます。
なお、社員証そのものの製作イメージや仕様例は、用途別のページにまとめています。
機能の4つの選択肢と、その選び分け
社員証に持たせる機能は、大きく4通りです。先に申し上げておくと、機能が多いほど良いというものではありません。所属証明と本人確認だけで足りている会社は実際に数多くあり、それは仕様として何ら不足ではありません。
顔写真のみ
もっとも基本的な形です。氏名・顔写真・社員番号を券面に印字し、その場で「この人が自社の社員である」と示すことに用途を絞ります。
入退室にカードを使っていない、勤怠はPCやスマートフォンで打刻している——そうした会社では、社員証に読み取り機能を持たせる理由がありません。来客対応や現場での提示、常駐先での身分提示が主目的であれば、この形で十分に役目を果たします。
後から機能を足したくなった場合も、券面のデザインはそのまま引き継げます。最初から将来の拡張を織り込んで過剰な仕様にする必要はありません。
バーコード・QRコード
カードに印刷したコードを読み取って使う形です。勤怠打刻、備品や書籍の貸出管理、社員食堂の精算といった運用システムと組み合わせて使われます。
利点は、印刷で表現できるため、カードそのものの構造を変えずに機能を持たせられることです。読み取り機も比較的導入しやすく、既存の業務システムにバーコード入力の仕組みがあるなら、それに合わせる形で社員証側を作れます。
決めておきたいのは番号体系です。券面に印字する社員番号とコードに埋め込む番号を一致させるのか、別の通し番号にするのか。ここが曖昧なまま進むと、システムへの登録段階で照合し直すことになります。バーコードには複数の規格があり、既存の読み取り機が対応する規格に合わせる必要があります。
参考:バーコード付きカードの種類と選び方|CODE39・JAN・NW-7の違いと発注時の注意点
磁気ストライプ
裏面に磁気テープを備えた形です。新規に社員証を作る会社が一から磁気を選ぶ場面は多くありませんが、すでに磁気対応の勤怠機や入退室設備が動いているなら、それを替える理由はありません。設備は使えているのにカードだけ作り直したい、というご相談は今も届きます。
既存設備との互換性が要件になるため、現行カードの仕様を確認したうえで進めることになります。
参考:磁気カードとは?ICカードとの違い・種類・作成ガイドを解説
ICチップ
内蔵したICチップを使い、入退室・勤怠・複合機のログイン認証といった複数の機能を1枚に集約できる形です。区画ごとにアクセス権を分けたい、誰がいつどこに入ったかの記録を残したい、といった要件があるならこの選択になります。
注意点は、非接触ICの代表的な規格であるFeliCaとMifareに互換性がないことです。リーダー側が対応していない規格のカードは読み取れないため、既存システムの規格に合わせる必要があります。ICカード社員証は準備すべきことが他の仕様と異なるため、別記事にまとめています。
参考:ICカード社員証の作成・発注ガイド|規格確認と発行方式
どう選び分けるか
判断は、既存の設備があるかどうかで大きく分かれます。
すでに入退室管理や勤怠のシステムが動いている場合は、選ぶ余地はほとんどありません。そのリーダーが読める仕様に合わせることになります。このとき見落とされやすいのが、社員証が1つのシステムだけで使われているとは限らない点です。入退室のほかに勤怠打刻、複合機の認証、社員食堂の決済と、1枚が複数のシステムをまたいでいることがあります。社員証が関わる機能をすべて洗い出してから、それぞれの対応規格を突き合わせてください。
これから整備する場合は、逆に用途から決めていきます。社員証に何を兼ねさせたいのか。読み取り機や管理システムを新たに導入する体制があるのか。ここが定まらないうちに高機能な仕様を選ぶと、機能を使わないまま更新時期を迎えることになりかねません。
券面に何を載せるか
氏名・顔写真・社員番号までは、ほぼどの会社でも共通です。判断が分かれるのは、所属部署と役職を載せるかどうかです。
載せれば来客対応の場面でわかりやすくなります。一方で、異動や昇格のたびに作り直しが発生します。組織変更が多い会社ほど、この負担は無視できません。券面に載せる情報は「変わらないもの」に寄せておくと運用が軽くなります。
レイアウトの面では、プラスチックカード固有の注意が一つあります。特別な指示がない限り、四隅は約3Rの角丸が標準仕様です。しかもこの角丸は、カードのサイズが変わっても同じ半径で統一されます。四隅ぎりぎりに文字やロゴを寄せると、意図しない切れ方になることがあります。
なお、氏名や社員番号のように1枚ごとに内容が変わる情報は、印刷ではなく印字(バリアブル加工)で入れていきます。全員共通の情報はあらかじめ印刷しておき、個人ごとの情報を後から入れる——この工程の切り分けが、次の素材や作り込みの話にもつながっていきます。
素材と厚みの考え方
社員証の素材はPVCが主流です。理由は2つあります。顔写真や氏名を1枚ごとに印字するバリアブル加工との相性がよいこと。そして毎日持ち歩き、ときにはポケットに入れたまま座られても割れにくい耐久性があることです。厚みは0.76mmが原則的な最大厚で、社員証はこの標準厚で作られることがほとんどです。環境に配慮した素材であれば、リサイクルPVCやPET-Gも選択肢に入ります。
一方、ICチップを載せる場合は、素材選定という論点自体がなくなります。ICカードはチップを基材の中に封入する構造のため、素材で迷う場面がありません。「ICカードにしたいが素材は何がいいか」というご相談をいただくことがありますが、この点は考えなくて大丈夫です。
つまり素材の検討が必要になるのは、顔写真のみ・バーコード・磁気を選んだ場合ということになります。
参考:カードの種類
券面の作り込み——ベースカードなら何ができるか
社員証の券面は、共通デザインを印刷したカードを先に作っておき、そこに個人情報を印字していく方法で作れます。この共通デザインの部分をオフセット印刷やシルク印刷といった大型の印刷機で刷れるのが、券面の表現においては大きな違いになります。
コーポレートカラーを特色で正確に再現する、細かな地紋を精細に表現する、といったことができるためです。そして、マイクロ文字やシルクスクリーンによるパール印刷も、この共通デザインの中に盛り込めます。肉眼では線にしか見えないほど細かな文字や、角度によって光り方が変わるパールの表現は、白無地カードを使って1枚ずつプリンタで出力する方法では再現しにくい領域です。
社員証は社外の目に触れる機会が多く、かつ模倣されては困る性質のカードです。券面の質感を高めたい、あるいは真似されにくい要素を持たせたい——そうした要望があるなら、共通デザインの段階でどこまで作り込むかを検討しておく価値があります。
なお、共通デザインを先に刷っておく方法と、1枚ずつ出力していく方法とでは、こうした券面の再現性が変わります。どちらが向くかは、初回の枚数とその後の発行ペース次第です。次の章で触れる追加発行の回し方とも直結する部分になります。
追加発行・再発行を見越しておく
社員証が一度きりの発注で終わることは、まずありません。中途採用、紛失、破損による再発行が、不定期に、しかも少人数ずつ発生します。発注の段階で「次の1枚」をどう出すかまで決めておくと、あとの手間がまったく変わります。
共通デザインを印刷したカードを先に作っておく方法を取る場合、カードマーケットでは製造済みのカードを前回発注から原則2年間、無料でお預かりしています。追加発行のたびに印刷工程から始める必要がなくなります。
一方、1枚ずつ出力していく方法なら、必要になった分だけをその都度発行できます。どちらで回すかによって、追加発行にかかる期間が変わります。とくにICカードはチップの工程が加わる分、この選択が納期に効いてきます。枚数別の選び分けは別記事にまとめました。
参考:ICカード社員証の作成・発注ガイド|規格確認と発行方式
運用ルールは発注と同時に決めておく
社員証の整備で見落とされがちなのが、発行後の運用です。誰が管理するのか、紛失時にどう動くのか、退職者からどう回収するのか。ここを先に決めておくだけで、後のトラブルはかなり減ります。
紛失や盗難は、毎日持ち歩くものである以上、一定の確率で起きるものと考えておいたほうが現実的です。基本の流れは申告 → 入退室やシステム権限の即時失効 → 再発行です。このとき押さえておきたいのが、カードを物理的に回収することと、システム上で使えなくすることは別だという点です。退職時の回収も同じで、全員から回収できる前提で計画を立てるより、システム側で失効させる日を先に決めておき、回収はそれとは切り離して進めるほうがうまくいきます。
回収したカードの廃棄も、フローに含めておきましょう。券面には個人情報が残り、ICチップや磁気ストライプにはデータが残っています。裁断による物理的な破棄や、チップの無効化といった処理を、誰がいつ行うかまで決めておくと安心です。退職者がまとまって出る時期には、この工程が後回しになりがちです。
そしてもう一点。社員証の発注では、氏名・社員番号・顔写真といった個人情報を名簿の形で発注先に預けることになります。一般的な印刷物の発注と決定的に違うのがこの点です。カードマーケットを運営するカーディナル株式会社は、プライバシーマーク(登録番号20001570)の認定を受けており、製造は国内の自社工場で一貫して行っています。預かった名簿データの保管期間や破棄のルールも、あらかじめ取り決めたうえで進められます。
参考:社員証・スタッフIDカードの発注先を選ぶ7つのチェックリスト
FAQ:よくある質問
- Q. 機能のない、顔写真だけの社員証でも作ってもらえますか?
- A. もちろん作れます。所属証明と本人確認に用途を絞った社員証は今も数多く使われていて、決して簡易版という位置づけではありません。読み取り機や管理システムを導入する予定がないのであれば、この形がもっとも運用しやすい選択になります。
- Q. 社員証は身分証明書として使えますか?
- A. 社員証は会社が発行する所属証明であり、公的な身分証明書ではありません。運転免許証やマイナンバーカードのような公的書類の代わりとしては使えないのが一般的です。一方で、取引先での自己紹介や社内での本人確認には日常的に使えます。
- Q. 既存の社員証と同じ仕様で作り直したいのですが、何を伝えればいいですか?
- A. 現物のカードをお手元にご用意ください。素材・厚み・磁気やICの有無は、現物から判断できることが多くあります。デザインデータが残っていない場合も、現物からデータを起こす形で対応できます。前任者から引き継いだ社員証で入稿データが見つからない、というご相談は決して珍しくありません。
- Q. 中途採用の1〜2名分だけ追加で発行できますか?
- A. できます。共通デザインのカードをお預かりしている場合は、そこに個人情報を印字するだけで発行できます。少人数ずつの発行が続くことを前提に、初回の発注時に進め方を決めておくと運用がスムーズです。
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まとめ
社員証の仕様は、持たせる機能・券面に載せる項目・素材と厚み・券面の作り込みという順で決めていくと整理できます。なかでも全体を左右するのが機能の選択で、すでに入退室や勤怠のシステムが動いているならその仕様から逆算し、これから整備するなら社員証に何を兼ねさせたいかから決めていくことになります。機能を持たせない顔写真だけの社員証も、今なお数多く使われている確かな選択肢です。
そして社員証は、入社のたびに追加発行が発生する用途です。初回の発注時点で「次の1枚をどう出すか」まで決めておけるかどうかが、その後の運用の軽さを分けます。仕様が決めきれない段階でも問題ありません。社員証の製作事例や仕様のイメージは、用途別のページにまとめています。
プラスチックカードの製作はカードマーケット(カーディナル株式会社)へご相談ください
社員証・従業員証・スタッフIDカードの新規製作やリニューアルをご検討の方は、ぜひカードマーケットへご相談ください。
カーディナル株式会社は、創業50年以上・国内自社工場を持つプラスチックカード製造の専門メーカーです。長年の経験と技術の積み重ねを背景に、取引社数7,000社以上の実績を持ち、会員証・診察券・社員証・イベントパスなど、あらゆる用途のカードに対応しています。「どんな仕様にすればいいかわからない」「小ロットでも対応してほしい」といったお悩みにも、専門スタッフが丁寧にご提案いたします。品質管理体制や製造工程については、【品質へのこだわり】のページで詳しくご紹介しています。
