ICカードとは?仕組み・規格・磁気カードとの違いを製造視点で解説
- 2026.06.01

社員証や会員証の新規製作・リニューアルを検討するとき、「ICカードにしたほうがいいのか」「磁気カードとどう違うのか」「どの規格を選べばいいのか」と迷う担当者の方は少なくありません。ICカードはひとくくりに語られがちですが、規格や用途によって仕様の選び方が変わります。この記事では、ICカードの仕組みと規格の種類から、磁気カード・バーコードカードとの違い、製作時の注意点まで、発注担当者が知っておくべき情報を解説します。
【目次】
ICカードとは
ICカードとは、プラスチックカードの内部にICチップとアンテナを内蔵し、専用のリーダー/ライターとの間でデータの読み書きができるカードの総称です。
ICカードには、端末の差し込み口に挿して接点を通じてデータをやり取りする「接触式」と、かざすだけで通信する「非接触式」の2種類があります。SuicaやPASMOのような交通系ICカードをはじめ、オフィスの入退室管理カード、スポーツクラブの会員証など、私たちが日常的に目にするICカードの大半は非接触式です。社員証・入退室管理カード・会員証といった業務用途でも非接触式が主流となっているため、本記事では業務用プラスチックカードで広く採用される非接触式ICカードを前提に解説します。
非接触式ICカードは、カード自体に電池を内蔵していません。リーダー側が発する電磁波をカード内のアンテナが受け取り、そのエネルギーでICチップが動作する仕組みです。通信距離は数センチメートル程度で、財布やケースに入れたままかざして読み取れる製品もあります。
ICカードの種類・規格——FeliCa・Mifare・ICODE・TypeA/TypeB
非接触式ICカードには複数の種類・国際規格があります。プラスチックカードの製作で実際に選択肢となる代表的な規格を整理しておきましょう。
FeliCa(ISO/IEC 18092・NFC-F)
ソニーが開発した規格です。通信速度が速く、SuicaやPASMOなどの交通系ICカード・電子マネーに広く採用されてきた実績があります。日本国内のシステムとの親和性が高く、入退室管理や会員証でFeliCaを採用しているシステムも多数あります。日本市場向けのカード製作では、まず最初に確認すべき規格のひとつです。
Mifare(ISO/IEC 14443 TypeA)
NXPセミコンダクターズが開発した規格で、ISO/IEC 14443のTypeA方式に準拠しています。世界各国での導入実績が豊富で、海外拠点を持つ企業のIDカードや、グローバル標準を求めるシステムで採用されるケースが多い規格です。セキュリティ要件に応じてMifare Classic・Mifare DESFireなど複数のバリエーションがあります。
ISO/IEC 14443 TypeB
アメリカのモトローラ社が開発した規格で、ISO/IEC 14443に定められたもうひとつの通信方式です。TypeAと周波数・通信距離は同じですが、変調方式と符号化方式が異なります。TypeAとは開発元が異なる独立した規格で、高いセキュリティ性が特徴です。日本ではマイナンバーカードや住基カード、IC運転免許証などで採用されています。日本国内の企業向けプラスチックカードではTypeAほど多くはありませんが、特定の行政・金融システムとの連携が必要な場合に指定されることがあります。
ICODE(ISO/IEC 15693)
NXPの非接触ICチップ「ICODE」が準拠する規格で、ISO/IEC 15693(ヴィシニティ=近傍型カード規格)に準拠しています。FeliCaやMifareといった近接型(ISO/IEC 14443・18092)の通信距離が数センチメートル程度であるのに対し、ISO 15693は最大約1メートル前後の読み取りが可能な点が特徴です。図書館の貸出管理システムや施設内の資産管理など、カードをかざす動作に多少のブレが生じる環境や、広めの通信範囲が求められる用途で採用されることが多い規格です。
これらの規格はそれぞれ互換性がありません。使用するリーダー/ライターがどの規格に対応しているかによって、製作するICカードの規格が決まります。システム側の仕様を確認しないまま発注してしまうと、既存のリーダーで読み取れないカードができあがってしまいます。カード製作の前に、必ずシステム担当者またはリーダーのメーカーに規格を確認してください。
参考:非接触型ICカード
ICカードと磁気カード・バーコードカードの違い
ICカードを選ぶ前に、磁気カードやバーコードカードとの違いを整理しておきましょう。
| 項目 | ICカード(非接触式) | 磁気カード | バーコードカード |
| 読み取り方式 | かざすだけ(非接触) | スワイプ(接触) | スキャン(光学読み取り) |
| 記録容量 | 大きい | 小さい | 小さい(コード内のみ) |
| セキュリティ | 高い(暗号化対応) | 中程度 | 低い |
| データ書き換え | 可能 | 可能 | 不可(印刷固定) |
| 必要な読取機器 | ICカード対応リーダー | 磁気リーダー | バーコードスキャナー |
| 主な用途 | 入退室管理・社員証・会員証 | ポイントカード・診察券 | 図書館カード・施設利用証 |
磁気カードは長年にわたって安定した実績を持つ規格で、既存のシステムが磁気対応であれば継続採用するケースも多くあります。バーコードカードは読み取り機器の汎用性が高く、図書館や公共施設など幅広い場面で使われています。
ICカードの特長は、3種の中でセキュリティ性が最も高く、データの書き換えも可能な点です。とはいえ、専用のリーダーが必要なことや、使用する規格がシステムと一致していなければならないという条件もあります。「ICカードのほうが優れているから」という理由だけで選ぶのではなく、用途と既存システムとの整合性を踏まえて判断することが重要です。
ICカードが選ばれる主な用途
社員証・スタッフ証(入退室管理との一体化)
オフィスや工場の入退室管理システムと社員証を一体化したいケースで多く採用されます。カードをかざすだけで入退室ログが記録されるため、セキュリティ管理と利便性を両立できます。顔写真・氏名・社員番号などを印字したバリアブル加工と組み合わせることで、IDカードとして必要な要素を1枚にまとめることができます。
社員証は追加発行が繰り返し発生するため、製造の効率化も考えておく必要があります。カードマーケットでは、共通デザインのみを印刷したベースカードをまとめて製造しておき、入社のたびにバリアブル加工(氏名・顔写真・番号など)だけを追加するフローを取ることができます。製造済みのベースカードは前回発注から原則2年間、無料で預かり保管するサービスも行っており、都度の再製造を省いて追加発行をスムーズに進めることが可能です。
入退室管理専用カード
社員証とは切り離して、入退室管理専用のカードとして運用するケースもあります。セキュリティゾーンごとにアクセス権限を細かく設定したい工場や研究施設などで選ばれる仕様です。
会員証・ポイントカード(商業施設・スポーツクラブ等)
カードにデータを持たせる必要がある会員システムで採用されます。磁気カードと比べてデータ容量が大きく、セキュリティ強度も高いため、より高度な会員管理システムへの対応が可能です。スポーツクラブや商業施設の会員証で、受付のリーダーにかざすだけで手続きが完結する運用に向いています。
学生証・施設利用カード
大学や公共施設の利用者証として採用されるケースもあります。図書館の入退館管理・貸出管理など、複数の機能を1枚で兼用したい場面では、ICカードのデータ容量の大きさが活きてきます。
製作前に確認すべき仕様と注意点
ICカードを製作するとき、事前に確認しておくべき点がいくつかあります。意外と見落とされがちですが、ここを曖昧にしたまま進めると、後から取り返しのつかないトラブルになりやすいポイントです。
① 使用するシステム・リーダーの規格を確認する
FeliCaとMifareには互換性がないため、社内システムや既存リーダー/ライターの対応規格を先に把握しておくことが必須です。新たにシステムごと導入する場合は、システム会社の推奨規格をもとにカードの仕様を決めてください。規格の確認を後回しにしたまま大量発注してしまうと、読み取れないカードが出来上がるリスクがあります。
② ICエンコード(データ書き込み)の仕様を確認する
ICカードの製作では、印刷とは別に、ICチップへのデータ書き込み(エンコード)が必要になる場合があります。エンコードの方式は大きく2つに分かれます。
ひとつは、チップに固有のIDをそのまま使う方法です。FeliCaではIDm、MifareではUIDと呼ばれる製造時に付与された識別番号をシステムに登録して管理します。追加のデータ書き込みが不要なため、比較的シンプルな運用です。
もうひとつは、チップ内のメモリ領域に独自データ(会員番号・権限情報・暗号鍵など)を書き込む方法です。この場合は、書き込む内容・データフォーマット・暗号鍵の仕様をまとめたエンコード仕様書が発注前に必要になります。
どちらの方式を取るかはシステム側の仕様で決まります。システム担当者またはシステム会社に「カードに独自データの書き込みが必要かどうか」を事前に確認した上で、発注時に仕様を明確にしてください。
③ テストカードで動作確認を行う
本番発注の前に、実際のシステムで正常に読み取れるかをテストカードで確認することを強くおすすめします。ICカードの初回導入時には、必ずお伝えしている手順です。大量製作後に読み取り不可が判明するリスクを未然に防ぐことができます。
④ 校正・納期の目安を把握しておく
ICカードは通常のプラスチックカードと比べて製造工程が増えるため、スケジュールには余裕を持った計画が必要です。印刷方法や加工内容によっても変わってくるため、お見積り時に納期と、校正が必要な場合は校正期間の目安を必ずご確認ください。
FAQ:よくある質問
- Q. FeliCaとMifareのどちらを選べばいいですか?
- A. 使用するリーダー/ライターやシステムが対応している規格に合わせるのが原則です。新たにシステムを導入する場合は、システム会社の推奨規格を確認してください。規格や性能自体に優劣はなく、システムとの互換性が判断の基準になります。
- Q. ICカードの表面に顔写真や氏名を印字できますか?
- A. 対応しています。ICチップ内蔵カードの表面にバリアブル印字(氏名・社員番号など)や顔写真加工を施すことが可能です。ベースカードをまとめて製造しておき、追加発行時にバリアブル加工のみ行う方法を取ると、都度カード全体を作り直す手間を省けます。
- Q. ICチップと磁気ストライプを1枚のカードに両方内蔵できますか?
- A. はい、対応しています。ICチップと磁気ストライプを組み合わせた仕様のカードも製作可能です。既存の磁気対応システムとICシステムを並行運用したい場面などで選ばれます。
- Q. 小ロットからでも製作できますか?
- A. はい、ICカードも小ロットからご対応しています。数百枚〜数千枚規模の中小ロットの製作実績も多数あります。必要な枚数・仕様についてはお気軽にご相談ください。
まとめ
ICカードとは、ICチップとアンテナをカード内部に内蔵し、リーダーにかざすだけでデータの読み書きができるカードです。社員証・入退室管理・会員証など業務用途では非接触式ICカードが広く採用されており、主な規格としてFeliCaとMifareがあります。両規格に互換性はなく、製作前に必ず使用システムとの適合確認が必要な点は、発注担当者として最初に押さえておくべきことです。磁気カード・バーコードカードとの違いを理解した上で、用途とシステム要件に合わせて仕様を選ぶことが、ICカード導入をスムーズに進める第一歩になります。
ICカードの製作・仕様選定でお困りの方は、ぜひカードマーケットへご相談ください。
プラスチックカードの製作はカードマーケット(カーディナル株式会社)へご相談ください
社員証・会員証・入退室管理カードなど、ICカードの新規製作や仕様選定でお困りの方は、ぜひカードマーケットへご相談ください。
カーディナル株式会社は、創業50年以上・国内自社工場を持つプラスチックカード製造の専門メーカーです。長年の経験と技術の積み重ねを背景に、取引社数6,000社以上の実績を持ち、会員証・診察券・社員証・イベントパスなど、あらゆる用途のカードに対応しています。「どんな仕様にすればいいかわからない」「小ロットでも対応してほしい」といったお悩みにも、専門スタッフが丁寧にご提案いたします。品質管理体制や製造工程については、【品質へのこだわり】ページで詳しくご紹介しています。






