クリアカードの新たな活用術|PET素材を重ねて完成する“集めたくなる”グッズ企画
- 2025.12.26

クリアカードのグッズというと、 「1枚で完成しているもの」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。透明素材ならではのデザイン性があり、単体で成立するグッズとして定着しています。一方で、“透明であること”を別の使い方に転用できる余地は意外と見落とされてきました。
今回ご紹介するのは、複数枚のPET製クリアカードを重ねることで、はじめて1つのデザインが完成するというアイデアです。1枚ずつ見るとシンプルなカードでも、重ねることで絵柄がつながり、意味を持ち始める。その体験そのものを、グッズ企画に組み込む発想になります。
来場や購入のきっかけづくりに使えたり、集める過程を楽しませる仕掛けとして活用できたりと、従来のクリアカードとは少し違った役割を持たせることができます。
この記事では、PET素材という現実的な仕様を前提にしながら、「重ねて完成するクリアカード」がどのように企画へ落とし込めるのかを、具体例を交えて整理していきます。
【目次】
PET素材のクリアカードとは
PET素材のクリアカードは、透明感のある見た目と扱いやすさから、トレカやノベルティグッズとして広く使われています。軽量で割れにくく、印刷適性も高いため、キャラクターやロゴ、グラフィックをきれいに見せたい場合に向いた素材です。紙カードよりも耐久性があり、ラミネート不要でそのまま配布できる点も、実務面では大きなメリットと言えるでしょう。
カーディナルで扱っているPETカードは、厚み0.25mmが基本仕様です。1枚では薄く感じられる場合でも、複数枚を組み合わせる前提で考えることで、新しい使い方が見えてきます。
よく比較される素材としてPVCカードがありますが、PETはPVCに比べてやや柔らかく、しなりがあるのが特徴です。強い硬さや重厚感を出す素材ではありませんが、その分、軽やかでカジュアルなグッズに向いています。
そのため、「しっかりした会員証」や「IDカード」といった用途よりも、気軽に手に取ってもらうプロモーショングッズや、イベント・キャンペーン向けの配布物との相性が良い素材と言えます。
また、白PETカードや白PVCカードと重ねる・組み合わせることで、見た目や触感のバリエーションを持たせることも可能です。単体素材としてだけでなく、構成の一部としてどう使うかを考えられるのが、PET素材クリアカードの面白さでもあります。
「重ねて完成するクリアカード」という発想
クリアカードというと、完成したビジュアルを1枚で見せるもの、というイメージが一般的です。しかし、透明素材であるという特性を活かせば、最初から1枚で完成させる必要はありません。
この企画の考え方はシンプルで、「1枚にすべてを載せる」のではなく、複数枚に役割を分けて設計することから始まります。
たとえば、
- 背景となるビジュアル
- キャラクターやモチーフ
- ロゴや装飾、フレーム
といった要素を別々のカードに分解し、それらを重ねることで、1つの完成形が現れる構成です。カーディナルでは実際に試作をし、そんな“見落とされがちだった使い道”をあらためて形にしてみました。

1枚ずつ見ると、それぞれは未完成に見えるが、手元でカードを重ねた瞬間に絵柄がつながり、はじめて意味を持つ。この「完成させる体験」そのものが、グッズの価値になります。
また、重ねるという行為があることで、カードは単なる配布物ではなく、集める理由を持ったアイテムへと変わります。「あと1枚で完成する」「全部そろえたらどうなるのか」そうした気持ちが、来場や購入といった行動につながりやすくなる点も、この発想の大きなポイントです。
クリアカードを“見せるグッズ”から“体験するグッズ”へ。重ねて完成させるという考え方は、そのためのごくシンプルで、現実的な方法と言えます。
なぜこの活用は見落とされてきたのか
クリアカードを「重ねて使う」という発想は、考えてみれば自然なことですが、これまで一般的な手法とは言えませんでした。その理由のひとつが、「透明=1枚で完成させるもの」という固定観念です。
クリア素材のカードは、背景が透けて見えること自体がデザインとして成立します。そのため、「単体で鑑賞するグッズ」として設計されることが多く、重ねて使う前提で考えられることは、ほとんどありませんでした。また、グッズ制作の現場では、できるだけ分かりやすく、説明のいらない仕様が好まれます。「重ねると完成する」という仕掛けは、一見すると少し手間がかかるように見え、企画段階で選ばれにくかった側面もあるでしょう。
しかし、見方を変えれば、それはまだ使い込まれていない余地が残っているということでもあります。クリアカードは広く普及している一方で、使い方自体はある意味、固定化されてきました。だからこそ、「重ねる」というシンプルな発想を加えるだけで、新しい体験を生み出すことができます。
次の章では、こうしたアイデアが「実際にカードとして成立するのか?」を、仕様の視点から見ていきます。
仕様視点で見る「重ねる」設計のリアリティ
「重ねて完成する」というアイデアは面白そうでも、企画担当者としては、本当にカードとして成立するのかが気になるところだと思います。
結論から言うと、PET素材の仕様を前提にすれば、この企画は十分に現実的です。
カーディナルで扱っているPET素材の基本厚みは、1枚あたり0.25mm。これを3枚重ねると、総厚は0.75mmになります。数値だけを見ると、クレジットカード(約0.76mm)とほぼ同等の厚みです。ただし、触ったときの感覚は同じではありません。PETはPVCほどの硬さはなく、複数枚にしても適度なしなりが残ります。
この「厚みは出るが、硬くなりすぎない」という特性は、むしろグッズ用途では扱いやすいポイントです。重ねてもゴツさが出にくく、持ち歩きやすさや軽さを保ったまま、カードらしい存在感を出すことができます。
また、構成次第では素材の組み合わせも可能です。たとえば、白PETカードをベースにして情報や背景を載せ、上にクリアPETカードを重ねてデザインを完成させる構成や、0.76mm厚のクリアPVCカード1枚+0.25mm厚のクリアPETカード1枚といった組み合わせも考えられます。
こうした設計により、見た目の奥行きやレイヤー感を演出しつつ、触感や耐久性を補うことができます。重ねる前提で考えることで、「1枚のカードに何を載せるか」ではなく、「どの層に何の役割を持たせるか」という設計視点が生まれます。この視点を持つことで、重ねるクリアカードは、企画・仕様の両面で現実的な『形』になります。
活用シーン別|刺さる企画アイデア深掘り
重ねて完成するクリアカードの強みは、単なるデザイン表現にとどまらず、来場・購入・回遊といった行動そのものを設計できる点にあります。ここではイメージをもとに、「どう使えるのか」「どう集めさせるのか」まで含めた企画アイデアを見ていきます。
表現を広げる①|コスチューム着せ替えという考え方
まず分かりやすい活用例が、キャラクターのコスチューム着せ替え表現です。キャラクター素体のカードに、衣装デザインだけを印刷したクリアPETカードを重ねることで、衣装が切り替わったような見え方を作ることができます。

この仕様であれば、
- イベントごとに異なる衣装カードを配布する
- 季節・周年・コラボごとに追加カードを展開する
- 同じキャラクターでも「集める理由」を継続的に作る
といった企画が成立します。
すべてを一度に完成させず、集める過程そのものを楽しませる設計ができる点がポイントです。
表現を広げる②|背景を重ねて世界観を切り替える
同じ仕組みは、キャラクターの背景表現にも応用できます。キャラクター部分をクリアPETカード、背景を白PETカードなどで用意することで、重ねるカードによってシーンや世界観を切り替える演出が可能です。

たとえば、
- 昼/夜、季節違いの背景を用意する
- 観光地・地域ごとの背景カードを集めさせる
- 同じキャラクターでも訪れた場所ごとの記念品にする
といった展開が考えられます。
背景カードだけを差し替える設計は、追加制作の負担が比較的軽く、企画を広げやすいのも特長です。
行動を生む|「集めること」が目的になる配布設計
こうした表現を、実際のイベントや商品施策に落とし込む際に有効なのが、「集めることで完成する」配布設計です。

この図のように、
- 会場内の複数スポットを巡って1枚ずつ集める「クリアカードラリー」
- イベント来場ごとに1枚配布し、全日程参加で完成する記念カード
- 商品タイプA・B・Cなど、購入ごとに1枚付属し、全種類で完成する仕掛け
といった使い方が考えられます。
カード1枚だけでは未完成だからこそ、「次も参加したい」「もう1つ買おう」という動機が生まれます。従来のスタンプラリーや特典配布と異なり、集めたカード自体が完成品になる点が、この企画ならではの価値です。
重ねて完成するクリアカードは、
- 表現の幅が広い
- 配布・購入導線と相性が良い
- 企画を段階的に展開しやすい
という特長があります。
単発のノベルティではなく、来場回数や購入回数を自然に増やすための仕掛けとして、検討する価値のあるグッズ企画と言えるでしょう。
企画担当者が押さえておきたい設計ポイント
「重ねて完成するクリアカード」はアイデア先行に見えがちですが、実際にはいくつかのポイントを押さえておくことで、企画としての完成度が大きく変わります。ここでは、企画段階で意識しておきたい設計の考え方を整理します。
デザイン設計で気をつけたいポイント
まず重要なのが、重ねたときに初めて成立するデザインになっているかどうかです。すべてのカードを重ねなくても見映えしてしまうと、「集める理由」が弱くなります。一方で、単体では情報が足りず、重ねて初めて意味を持つくらいのバランスが理想です。
また、透過を活かすためには、色数やベタ面積をコントロールすることも大切です。色を載せすぎると重ねた際に濁って見えるため、どの層にどの色を使うかを意識した設計が求められます。
さらに、印刷や打ち抜き・断裁時に発生する「わずかなズレ」を前提に考えることも大切です。どんな印刷物でも、ミクロン単位の印刷ズレや、カード外形の抜きズレが完全にゼロになることはありません。1枚で完結するカードであれば気にならない程度でも、複数枚を重ねる仕様では、そのズレが視覚的に目立つケースがあります。
そのため、
- 細い線やピッタリ重なる罫線を多用しない
- レイヤー同士が完全一致しないと成立しない表現は避ける
- あえて多少ズレても成立する「余白」や「にじみ」をデザインに持たせる
といったズレを許容する設計が重要になります。
配布・販売設計の考え方
次に考えておきたいのが、どのタイミングで、どのカードを渡すかという設計です。すべてを一度に配布するのか、来場や購入と紐づけて段階的に配布するのかによって、企画の意味合いは大きく変わります。
また、カードの順番にも注意が必要です。最初の1枚だけでも「続きを集めたい」と感じてもらえる構成にすることで、次の行動につながりやすくなります。
無くした場合の再配布や、どこまでをコンプリート扱いとするかなど、運用面も含めて事前に整理しておくと安心です。
重ねるクリアカードは、デザイン・仕様・運用が噛み合ってこそ、企画としてしっかり機能します。次章では、こうしたポイントを踏まえたうえで、なぜ「試作」が企画成功の鍵になるのかを掘り下げていきます。
なぜ「試作」が企画成功の鍵になるのか
「重ねて完成するクリアカード」は、文章や企画書だけで魅力を伝えるのが難しいグッズです。仕組み自体はシンプルでも、透け方や重なり方、手に持ったときの印象は、実物を見て初めて伝わります。そのため、このタイプの企画では、試作の有無が成功の分かれ目になることも少なくありません。
重ねたときの見え方や、カード同士のずれによる印象の違い、想定していた色味とのギャップなどは、机上ではなかなか判断しづらいポイントです。試作を行うことで、「ここはもっとシンプルにした方がいい」「この部分は別の層に分けた方が分かりやすい」といった具体的な改善点が見えてきます。
また、試作サンプルは、社内やクライアントへの説明においても大きな力を発揮します。言葉で説明するより、実物を手に取ってもらうほうが理解が早く、企画の意図が正確に伝わります。「この仕組みなら実現できそう」「この形なら展開できる」、そうした判断がその場で得られる点も、試作を行うメリットです。
最初から完璧を目指す必要はありません。まずは既存のロゴやキャラクター素材を使って、『透け感』や『重なりの見え方』を確認するだけで十分な一歩になります。
実際にこうした試作を進める際、「少量でもお願いしていいのだろうか」と感じる方も少なくありません。カーディナルでは、小ロットでのカード製作も行っており、企画段階の相談から進めることが可能です。カード専業メーカーとして、「この構成は現実的か」「重ねたときにどう見えるか」といった点も含めて、企画内容に合わせた提案が可能です。
まだ形が固まっていない段階でも、「こういう使い方はできる?」「この枚数だとどうなる?」といった試作を前提にした相談から始めることで、「アイデア止まり」で終わらせず、実現に向けた一歩を踏み出しやすくなります。
まとめ|「重ねる」という発想で、クリアカードはもっと企画になる
PET素材のクリアカードは、これまで「1枚で完成するグッズ」として使われることがほとんどでした。しかし、複数枚を重ねて完成させるという視点を加えるだけで、クリアカードは集める理由を持った企画ツールへと変わります。
来場や購入を段階的に促したり、イベントをまたいで楽しみを継続させたりと、使い方次第で、グッズの役割そのものを広げることができます。また、この企画は決して突飛なものではありません。PET素材の厚みや特性を踏まえれば、仕様としても現実的に成立し、運用面も無理のない形で設計が可能です。
重要なのは、最初から完成形を決めきろうとしないことです。重ねたときの見え方やボリューム感は、実際に試してみて初めて分かる部分も多くあります。
カーディナルでは、PET素材のカード製作をはじめ、小ロットでの製作や企画段階からの相談にも対応しています。カード専業メーカーとして、「この構成は実現できるか」「どう分けると見せやすいか」といった点も含め、仕様と企画の両面から整理することが可能です。
「少し変わったグッズを考えたい」「次の施策で、もう一工夫したい」、そんなタイミングで、「重ねて完成するクリアカード」という選択肢を思い出してもらえたら幸いです。アイデアを形にする第一歩として、まずは試作や仕様相談から気軽に検討してみてはいかがでしょうか。
重ねるクリアカードの企画についてご興味がありましたら、カーディナルまでお気軽にお問い合わせください。







